日曜日, 12月 10, 2006

TOC「制約条件の理論」

TOCは、社会学者というよりも物理学者の生み出した理論による「方法論」ともいえよう。

TOCは「Theory Of Constraints」の頭文字をとったもの。
「制約条件の理論」と訳される。
この理論体系は、1970年代後半、イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラット博士によって開発・提唱され、SCM(Supply Chain Management)における理論としても有名。

知っている人には、釈迦に説法。読み飛ばしていただければ幸い。
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簡単に内容をいえば、
工場の生産性はボトルネックとなる工程の能力以上には向上しない。ボトルネックとなる工程に注目することで、仕掛品や在庫を減らし、最大の利益をあげるという理論。

多数の工場に導入され、その実績からJIT(ジャスト・イン・タイム)を超える生産方式といわれる。また、問題解決手法として「思考プロセス」を開発。製造のみならずビジネス全般、さらに人間が介在するあらゆるシステムの問題解決へと応用が広がっている。
この思考プロセスは、実は、この土曜の会社の集中ディスカッションにも用いる手法。

さて、ここでは、音楽への適用を考えるため、TOCの基本ステップを紹介しよう。
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1.制約条件を特定する。即ちボトルネックの特定。
・・・潜在能力ではなく、実際の生産能力で把握する。

2.制約条件を徹底的に活用する。
・・・制約条件となっている部分の能力を最大限に発揮させるようにする。

3.制約条件以外を制約条件に従属させる。
・・・制約条件以外の部分の能力をフルに発揮させると、かえって経営資源の無駄遣いになりかねないので、制約条件の部分に合わせるようにする。

4.制約条件の能力を向上させる。
・・・設備増強や人員増などの投資を行う。

5.惰性に注意しながら、新しい制約条件を特定する。
・・・新たに制約条件となっている部分を見つけ、1から4のステップを繰り返す。


さて、
TOC理論を企業小説にした、「The Goal」は、1984年に出版されたのだが、7年を経て、2001年5月にようやく日本語に翻訳された。
当時、「カイゼン」により、有数の部分的生産性の高さをほこる日本には、教えたくなかったほどの全体最適理論であったということかもしれない。

私は、2000年から2001年にかけて、全く異なる観点、日本でのサプライチェーン関連本からTOC理論を学んだ。
当時の日本の大半のコンサルの方々は、まだサプライチェーン議論において、TOCをあまりよく知らなかったので、非常に困ったことがある。
スループット会計(キャッシュフローの最大化を達成する為の管理会計のひとつ)といっても、誰もわからないのであった。(勿論SCM専門のコンサルであればそのようなことはないと思うが)

また、日本では、当初、現場改善、部分最適の延長線上で捉え、現状のパラダイム(部分最適、原価計算)のままTOCをつまみ食いするという方法であったため、本来の効果が発揮されない状態が続いたといわれている。

が、ようやく、日本でも、本格的普及に至りつつあるようである。

なお、ザ・ゴールには、もう一つ重要なメッセージが込められている。

「TOCを使って仕事の改善を行なうことによってできた時間を家族や個人生活を豊かにする為に使いなさい」ということのようである。

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参考
ザ・ゴール 企業の究極の目的とは何か
( 著者: エリヤフ・M.ゴールドラット / 三本木亮  
出版社:ダイヤモンド社/単行本 / 552p
発行年月: 2001年 05月
主人公は、あるメーカーの工場長。
長引く採算悪化を理由に、わずかに3か月で、収益体制を改善しなければ、工場は閉鎖され、多くの人が職を失ってしまうことになる。
半ば諦めかけていたが、これまでの生産現場での常識を覆す考え方で、彼の工場が抱える諸問題を次々に科学的に解明。そのヒントをもとに工場の仲間たちとたゆまぬ努力を続け、超多忙な日々を過ごす彼だった。
が、あまりにも家庭を犠牲にしてきたため、妻は彼の前から姿を消してしまう。
仕事ばかりか、別居、離婚という家庭崩壊の危機にもさらされ…。
【目次】
1 突然の閉鎖通告/2 恩師との邂逅/3 亀裂/4 ハイキング/5 ハービーを探せ/6 つかの間の祝杯/7 報告書/8 新たな尺度
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アメリカ製造業の競争力を復活させた、幻のビジネス小説。全米で250万部を超えるベストセラー!

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問題は、制約条件だらけ、ボトルネックだらけの場合である。笑




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