穀物市況と自動車燃料(バイオアルコール登場)の関係
穀物生産国米国の動向
世界最大の穀物生産国は米国である。
米農務省発表の 2006 年 9 月から 07 年 8 月にかけての世界穀物需給見通しによれば、トウモロコシ生産量 2 億 8.230 万トンで 40.9%を占める。
南米のブラジル 5.600 万トン 25%、アルゼンチン 4.130 万トン 18%、両国を合計する9.730 万トンと米国を上回る。
内陸部にあり、収穫した大豆を輸出港まで約 2.000kmトラックで陸送しなくてはならない。
穀物取引の中心は、シカゴ商品取引所(CBT)で、北半球、南半球双方に穀物生産地を有する大陸は米州の他には無い。
作付け、生育、収穫による在庫と需要で一方、それを見ながら需要予測のもとに南米で農作業が進められ、その南米の作柄も価格に影響する。
用途として注目されているのがエタノールである。
米国は包括エネルギー法で、ガソリンに添加できるエタノール量を倍近い年間 75 億ガロン(1 ガロン 3.785?)まで引き上げる方針を打ち出した。
エタノールは水分を含みやすく石油用のパイプラインは錆付く恐れがありエタノール輸送には使えず、陸送しかない。その生産地から製油所までの輸送のコストと時間は馬鹿にならない。
大豆とトウモロコシ価格差縮小米中西部の穀物生産者は、9~11 月に収穫を終えると翌春の作付け計画を立てる。
年末までに種子を購入すると価格割引される制度があり、大豆とトウモロコシのどちらに作付けするかを検討する。
トウモロコシ割高傾向により、米国では来春トウモロコシの作付けが増えると見られている。
ガソリン代替品のエタノール向け需要が堅調であるためとされている。
昨年同期には 2.75 倍で大豆作付けを選んだ生産者が一転今年はトウモロコシ作付けに向いる。
エタノール生産工場は全米で百ヶ所を超え、さらに 44 工場が建設中で、原料トウモロコシの引き合い堅調で、市場関係者の間では、当面 3 ドル前後の高値を維持するとの見方が強い。
米農務省によると、エタノール向け需要は約 2 倍に膨らむ見通しで、米国の在庫は過去最低水準に落ち込む見通しとなっている。
中国始め新興国の穀物とガソリン需要は簡単に衰えることは無い。
こうした動きの中で、世界的な「カネ」あまりの中、投資家はそれが切り上げに繋がっている。
穀物の国際価格の急騰混乱米国の来春収穫する冬小麦の作付けが進んでいる。
その中で 2006 年 10 月 16 日米農務省が発表した 2006~07 年穀物年度のオーストラリアの小麦の予想生産高は1.100 万トン、前年度実績の 2.450 万トンの半分以下で輸入国に転じるとの声もある。
南半球の有力輸出国オーストラリアの旱魃で生産高が激減の見通しでシカゴ商品取引所の小麦価格は 1 ブッシェル(27.2 キロ)5 ドルを突破し約高値となった。
生産者小麦の作付けを増やすと見られ、これまでの約 5.700 万エーカー(1 エーカー:40 アール)を 6.300 万エーカーにすると見られている。
小麦と穀物の産地が重なるのは、イリノイ州、カンザス州、ネブラスカ州などで、小麦の作付けが広がれば、トウモロコシや大豆の作付面積が減る。
小麦の作付け後は、余剰感の強い大豆よりも採算の良いトウモロコシを作ろうとする農家が増えそうである。
大豆は記録的豊作と確認されながらもシカゴの大豆相場が上昇しているのは、作付け減少を見通しての値動きである。
農地は異常気象で南半球の小麦供給が激減すると北半球の作付け面積が小麦が割安な他の穀物の作付け面積を圧迫して、高値が穀物にも広がる。
大豆豊作で、これからブラジルの作付けが減るかもしれない。
こうしてドミノ式に穀物高値維持が拡がりを見せいる。
燃料価格と政府補助金がエタノール工場へ生産拡大への追い風となっている。
農産物市場はこれまで魅力が乏しかったが、世界人口増、アジアの食糧需要の急拡大、それに加えてのエタノール燃料需要増から農地の価値の急騰を考え、長期的視点に立つ投資家が世界中の農業適地を買い漁り始めている。
異常気象による穀物生産への影響、需要の急速な伸びに対して、生産は追いついて行けるのかが課題となっている。
サトウキビ産地のブラジルは、欧米企業がアルコールをガソリンに混ぜ自動車燃料と用いるフレックス車を 2003 年に初導入して以来、新車は 7 割を占め、この分野では先進国である。
主要生産国タイの製糖大手ルン・ルアンググループへエタノール技術支援事業が進められている。
米国では、米欧石油大手が販売するガソリンにエタノールを混合する事を決めた。
このためエタノール燃料の供給が不足するとの懸念が浮上し出している。
エタノール生産世界のエタノール生産は、107 億 7.000 万ガロン(2004 年米業界資料)で、その中で超大国は、二国である。
大量生産し、集積が容易で生産コストが安く、しかも地産地消が好ましい液体燃料となると、米は特殊な条件でしか成り立たない。従って、ブラジル、インドはサトウキビ、米国、中国はトウモロコシ、フランスは小麦、ビートをアルコール生産の主原料として
いる状況にある。
大手穀物商社 ADM(アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド)は、米国内エタノール市場の 3 割を握る最大手だが、エタノールの生産能力を 2008 年までに方針である。
ガソリン消費策の中の一番早い成長事業がエタノールと業界は見ている。
ガソリンスタンドで、エタノール混合燃料を補給出来るのは中西部を中心とした約 600 ヶ所に過ぎない。
米コーネル大学、デヴィッド・ピメンテル教授の試算では、トウモロコシが原料の場合「米国でエタノールの生産・精製に費やすエネルギーは、エタノールが生み出すエネルギーを 29%上回る」としており、石油漬け農業穀物からでは無く、太陽光による天然エネルギーによる炭素固定された木材・草木、それも廃棄されるものを原料としてエタノール生産する技術革新がこれからの目標となる。
植物からバイオエタノール生産技術最近、サトウキビやトウモロコシなど植物を原料にしたアルコール燃料「バイオエタノール」が注目されているもう一つの理由として、ガソリン代替と同時に地球温暖化対応の利点である。
菌や酵母を使って発酵させ、蒸留・脱水するとエタノールが得られる。
石油エネルギー漬け農業による穀物からエタノールを作り燃料として使用することは、化石燃料を消費する事と変わりが無い。
米エネルギー省の試算では、様々な穀物や森林の廃材を活用することで米国はバイオマスを生産出来る。
これで米国は 2030 年までに国内液体燃料需要のほぼ 1 を置き換えるだけのエタノールを生産出来るとしている。
ジョージ・ステファノポーラス教授は、セルロースを砂糖に分解する効率的方法を見つけ、砂糖と植物系化合物を好むエタノール発酵微生物を育成し量産する方式を創出することが課題となるとしている。
最近遺伝子組み換え大腸菌「KO11」は C5 糖を発酵させエタノールを作る事が出来ると報じられ、各処で木材からのエタノール製造実験が進められている。
エタノール市況原油に連動かガソリン代替の自動車燃料エタノールの需要拡大が、エタノールの原料であるサトウキビやトウモロコシの需給を引き締めるとの見方が強まり、サトウキビから作る粗糖価格は高値圏となっている。
シカゴ商品取引所は、2005 年 3 月にエタノール先物を上場したが、トウモロコシ、大豆など主要穀物が値下がりしても、エタノールは上昇している。
産地ブラジルでサトウキビがエタノール工場に出荷され、粗糖生産が減ったためである。
この中で、ブラジルは、アルコールとガソリン併用のフレックス車が普及しており、2005 年総販売台数 163 万台中フレックス車 55%、ガソリン車 37%、デイーゼル車 8%と燃料用アルコール需要が原油高騰によってエタノール生産が増強された。
耕作地面積は、このうちサトウキビは600 万ヘクタールで、その中から年間約バイオエタノールを生産、約 240 万キロリットルを輸出している。
ブラジル政府は、雇用拡大対策として、バイオエタノール生産の拡大を進めており、毎年 100万キロリットル以上急増している。
サトウキビからのバイオエタノール生産技術効率化の研究開発を遺伝子組み換えを含めた先端技術によって進めるとサトウキビ生産地の調査も国策として精力的に行なっている。
食用油の原料となる菜種は、オーストラリアとカナダが供給国であるが、オーストラリアが旱魃不作のためにカナダへの供給依存が集中し、国際価格指標のカナダ・ウイニベグ市場で 2004 年 9 月以来の高値水準となった。
カナダ穀物委員会によれば、カナダの 06 穀物年度(06 年 4 月~07 年 3 月)の菜種輸
出量は、前年同期比 43.8%増の 151 万 9.000 トンとなっている。
欧州などで、自動車の代替燃料として菜種油が使われている事もカナダからの輸出
増に結びついているとしている。
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穀物市場と自動車の代替燃料の関連はコスト論への影響を含め複雑である。
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